クロスレイヤ協調

クロスレイヤ協調の目的は,レイヤ間の制御情報の交換によって処理効率を改善することにある.我々はCEAL (Cross-layer control information Exchange between Arbitrary Layer) [RFC 5184]というクロスレイヤアーキテクチャを提案している.CEALにより,レイヤ構造を維持しつつも,任意のレイヤ間で制御情報の交換が可能になる.
CEALでは,あるレイヤの制御情報はプロトコル・デバイス依存の表現からプロトコル・デバイス非依存の表現へと変換された後,他のレイヤと交換される.

CEALで実現できることの例,

  1. ネットワーク層における,リンク層とネットワーク層の協調による高速ハンドオーバ[L3-FHOX]
  2. SCTPにおける,リンク層,ネットワーク層,トランスポート層の協調による高速フェイルオーバおよび高速ハンドオーバ[SCTPfx, SCTPmx].

このように,明確に定義されたクロスレイヤアーキテクチャでレイヤ間の制御情報の交換を行うことにより, レイヤ構造の恩恵を受けつつも,柔軟な処理をすることが可能となる.

CEALアーキテクチャ

各レイヤの情報は,他のレイヤに送られる前に抽象化する必要がある.例えば,IEEE802.11では,Received Signal Strength Indicator (RSSI),再送回数,モバイルノードとアクセスポイントとのつながりの有無といった情報は,リンク層が多様な環境や状況に適応するために利用される.

従来のプロトコルレイヤモデルでは,Protocol Entity(PE)は特定のプロトコルを処理するエンティティとして定義される.CEALでは図1のように,Abstract Entity(AE)を,リンクの独立性を実現するために導入している.AEとPEはペアになっている.AEはPE依存の情報を,PE非依存の情報へと抽象化する.

プリミティブ

各レイヤは,サービスをプリミティブの形式で提供する.図2のように,プリミティブには4つのクラスが定義されている.Requestは,他のレイヤからサービスや情報を取得する際に送信される.Confirmは,Requestへの確認応答である.Indicationは,サービスをRequestしたレイヤへの情報通知である.Responseは,Indicationへの確認応答である.このアーキテクチャでは,レイヤ間の通信は対称的である.

3タイプのプリミティブ利用

CEALでは,図3のように3つのプリミティブの利用法が定義されている.

  • Type 1: 対象レイヤの情報を速やかに取得する
    Request,Confirmクラスのプリミティブが交換される.Requestプリミティブは対象レイヤの情報取得の要求である.Confirmプリミティブはその回答である.
  • Type 2: 対象レイヤでのイベントを非同期で他レイヤへ通知する
    Request,Confirm,Indicationクラスのプリミティブが交換される.Request,Confirmプリミティブは事前登録のみに利用される.イベントが発生すると,Indicationプリミティブが登録されたレイヤへ非同期で送信される.
  • Type 3: 対象レイヤの動作を他レイヤから制御する
    Request,Confirmクラスのプリミティブが交換される.Requestプリミティブは操作に対する要求となる.Confirmプリミティブにより,速やかにAckまたはNackが返される.